事務局だより(2019年8月23日)

7月の講演会では、東アジア地域におけるユダヤ人の歴史と活動についてお話しいただきました。日露戦争や第一次世界大戦、そして第二次世界大戦の時代に、アジアに居住するユダヤ人がどのように生き、日本といかような関わりを持ったのか、欧米中心のユダヤ史からは抜け落ちていた箇所に光を当てていただきました。また、近代以前からユダヤ人が住み着いていたという中国の開封や、20世紀前半に際立った経済活動を展開した上海に残るその足跡など、お見せいただいた写真も大変に興味深いものでした。

9月は、歴史文化交流フォーラムに属する世界史研究所が翻刻した箕作麟祥編『萬國新史』をめぐって、翻刻に携わった研究所を代表して3名の方からお話しをうかがいます。なお、この9月講演会をもって、本フォーラムの月例講演会は終了となります。

どうぞ奮ってご参加ください。


熱暑のつらさに吐息をもらしながらも、ふと気付かされる晩夏の気配には一抹の寂しさを覚えるこの頃です。

2004年2月以来続けてまいりました月例講演会も、会場となってきたビルの解体にともない、9月が最後となってしまいました。長くご支援いただいた皆さまのご支援ご厚恩に拝謝いたします。本フォーラムの講演会は終了しても、人の営みが積み上げる歴史や文化を経巡る私たちの好学の旅は続いていくことでしょう。別の場所、異なる機会で皆さまにお会いできる日が来ることを信じつつ。

―遠花火まだ一仕事残る街 (小沢昭一)

事務局だより(2019年6月21日)

 5月の講演会では、まずインド独立(1947)後の政権や経済政策の推移、印パ問題の大きな流れをご説明いただきました。さらに、講演者ご自身が多年に渡って撮りためた写真やビデオをもとに、移り変わる(あるいは変わらぬ)街や人の姿を重層的に示して貰いました。また、やはりこの3月に講演者が訪問された、日本ではあまりよく知られていないネパールの民主化運動の情報や、2015年の地震以降の様子も興味深くうかがいました。
 6月は通常の月例講演会にかえて、川越へのエクスカーションを実施いたしました。現地在住の本NPO会員によるご案内で、川越祭り会館や喜多院に加え、遊郭跡、お菓子屋だった古民家の内部など、一味違った小江戸探索を楽しみました。
 次回7月は、あまたあるユダヤ史研究のなかでも、数少ない東アジアのユダヤ人をテーマにお話を伺います。
 どうぞ奮ってご参加ください。
 8月は事務局の夏休みのため、講演会はお休みさせていただきます。次回は9月14日(土)16時から、箕作麟祥『萬國新史』の翻刻をめぐってお話しいただく予定です。
 詳細は追ってお知らせいたします。


 梅雨のさなか、重く水分を含んだ空気がからだに浸み込んで、汗に変わっていくような錯覚をおぼえます。夏の本番はまだ先ですが、そろそろ水辺や涼を楽しむ食が慕わしい季節です。体調を整えて、暴発する夏の光にそなえたいものです。

―清滝の水汲みよせてところてん(松尾芭蕉)

事務局だより(2019年4月26日)

 4月の講演会では、近年深刻な課題として浮上してきたマイクロプラスチック問題をはじめとして、日本が抱えるゴミと環境の問題一般について、リサイクルのあり方やゴミ処理施設の現況等々、講演者独自の取材に基づいて詳しくご説明いただきました。我々が日々排出しながら無頓着になりがちなゴミの行方を、正確に把握し、社会に伝えようとする講演者のジャーナリストとしての使命感に圧倒されるお話しでした。
 次回5月は、この春にインドとネパールを視察してきた講演者の方から、両国それぞれの歴史的発展や関係、現況について語っていただきます。
 どうぞ奮ってご参加ください。

 6月はいつもの渋谷の講演会場を離れ、歴史や文化の現場を訪れるエクスカーションを行います。以前に、同様の試みを横浜と東京両国で行い好評を得ましたが、今回は埼玉県の川越へ赴く予定です。第2土曜日の8日に開催いたします。また、7月の講演会では、北東アジアにおけるユダヤ人をテーマにお話しいただきます。
 詳細は追ってお知らせいたします。


 5月の大型連休は一大行楽シーズンでもあれば、田植えの時期でもあります。長く海外で遊民生活をしていたころ、たまたま出会った同胞たちに、心に浮かぶ故国の風景について尋ねてみたことがありました。もっとも多く得た返答が「水田」でした。青々とした稲を立ち並べて平らかに広がる水田には、都市出身者まで含めて、我々の郷愁を誘ってやまない原風景があるのかもしれません。

―さをとめのあやめを抜て戻りけり(正岡子規)

事務局だより(2019年3月27日)

 3月の講演会では、沖縄金武湾の石油備蓄基地建設に抗して起こった市民運動について、映像をはじめ貴重な資料をもとに解説していただきました。「戦場難民」であった地元民が「基地難民」となって再び居場所を奪われていく歴史のなかで、金武湾闘争が持つ意義を、個々人と運動体との結節やそのあり方の漸次的変化といった、市民運動の本質的な部分まで踏み込んでお話しいただきました。講演後の質疑応答では、当時の中東やベトナム戦争の情勢と石油備蓄基地の関連など、世界史的な広がりに発展する議論が展開されました。
 次回4月は、世界中で大きな環境汚染問題として騒がれ始めたマイクロプラスチックがテーマです。核のゴミをはじめ、人間の排出する様々な種類のゴミが生態系をこれほどまでにおびやかしている時代はありません。その中でも、マイクロプラスチックの問題が我々の耳目に触れるようになったのはごく最近のことであり、その実態や問題点について、まだ我々の多くはあまり分かっていないのが実情です。次回講演会では、環境問題を探求してこられたジャーナリストの方をお迎えして、詳しくお話を伺います。
 どうぞ奮ってご参加ください。
 5月の講演会は11日(第2土曜日)に開催します。著しい経済発展で世界の注目を浴びるインドですが、多民族多宗教の複雑な社会でも知られています。この春にインドに調査に赴かれた講師をお迎えし、各宗教の聖地を紹介していただきながら、現代インド社会における宗教の影響を中心に、新鮮な情報を提供していただく予定です。
 詳細は追ってお知らせいたします。


 桜開花の便りが関東地方や西日本を中心に列島を華やがせています。桜花には去年の花、あの時の花、そしてやがて来る年の花と、年末年始にも劣らず歳月を意識させる不思議な力が備わっているように思えます。花のもと、特別なひと時をお過ごしください。

―散る桜残る桜も散る桜 (良寛)

事務局だより(2019年2月19日)

 2月の講演会では、高校で必修化される新科目「歴史総合」に向けて、アイヌ史を基点に、歴史を世界史的にとらえる試みを提示していただきました。さまざまな場所から語り得る世界史像という発想自体が、新鮮な刺激でした。また、講演者に示していただいた『宗谷場所御引渡目録』や蠣崎波響の「夷酋列像」図も興味深く、文書を読み解くことから始まる歴史研究の面白さを堪能しました。
 次回3月は、沖縄返還後すぐに起こった住民運動である金武湾闘争に焦点を当ててお話しいただきます。日米両政府の国策の狭間で住民の権利を主張したこの闘争は、現在の辺野古埋め立てに抗する運動を歴史的に理解するうえでも、とても重要な指針になると思います。
 どうぞ奮ってご参加ください。
 4月の講演会は13日(第2土曜日)に開催します。環境、とくにごみ問題について活発な発言を続けていらっしゃるジャーナリストの方を講演者にお迎えする予定です。
 詳細は追ってお知らせいたします。


 まだ冷たい大気のなかで、開き始めた梅や桃の花が、街や野のところどころにほんのり暖かい色どりを添えています。コートの前を開いて、光量を増す陽射しを抱き留めたくなる日が増えてくることでしょう。新たな自然の躍動の兆しに、心華やぐ時が多からんことを願います。

―うれしさは春の光を手に掬(すく)ひ (野見山朱鳥)

事務局だより(2019年1月16日)

 1月の講演会では、昨年の歴史的といえる韓国と北朝鮮首脳の会談について、文化・スポーツ交流を含めたその前史から説き起こしていただきました。また、日本海を挟んだ北東アジア諸国の地政学的、歴史学的関係の重要性についても新鮮な視座を提示いただきました。韓国や北朝鮮の報道を踏まえた金正恩委員長の「改革・開放」路線や米朝関係についての考察は、日本の報道のみに依拠しがちな私たちに、改めて国際問題一般について、多角的な検証が必要であることを実感させるものでした。
 次回2月は、日本の周縁部の歴史としてのみ扱われがちな北海道やアイヌの歴史を、世界史という広いパースペクティヴからとらえるとどのような相貌を現すのか、北海道から『今学ぶアイヌ民族の歴史』の著者をお迎えして語っていただきます。
どうぞ奮ってご参加ください。
 3月の講演会は9日(第2土曜日)に開催します。辺野古をめぐって揺れる沖縄の現状を中心にお話しいただく予定です。
 詳細は追ってお知らせいたします。


 大寒から名のみの春へ寒気が勢いづくなか、受験シーズンを迎えています。ひとは、願った目的地へとたどり着くことのなさそうな旅路の終盤になっても、この時期の凛と張りつめた冷気と緊張感は覚えているようです。若いひとたちの健闘を願ってやみません。
 
―こころざすひとりに一つ冬銀河(川崎洋吉)

事務局だより(2018年12月26日)

 12月の講演会では、日本語ネイティヴではない日本在住者とコミュニケートする際の言葉遣い(=気遣い)のコツを、豊富な具体例を引きつつ、お話しいただきました。ネイティヴゆえに看過しがちな「やさしい日本語」が、外国人だけでなく日本人も含む他者一般にたいするやさしさから作られていくことに改めて気付かされる講演でした。

 次回1月は、日韓の「境界人」として生きる講演者をお迎えし、大きな転換期を迎えている韓国と北朝鮮の現況を分析していただきます。同時に、歴史問題等で両国との関係が混迷を深めている日本を含めて、北東アジアの平和と安定に向けた思考とアクションの可能性について語っていただきます。

どうぞ奮ってご参加ください。

2月の講演会は2日(第1土曜日)に開催します。アイヌから見た世界史像を中心にお話しいただく予定です。

詳細は追ってお知らせいたします。


 ひとの社会が時間を分節し、歴史を刻むことで成り立っていることをとりわけ意識させられる時期を迎えました。
 今年も皆さまからはご支援と励ましの声を数多くいただきました。深謝申し上げるとともに、皆さまの明るさに満ち満ちた年末年始を祈念いたします。

―かるがると上る目出度し餅の杵(高浜虚子)

事務局だより(2018年11月28日)

 11月の講演会では、幕末1867年に将軍の実弟、徳川昭武の随員として欧州に渡った渋沢栄一の旅路について、渋沢の手紙や現地の報道を参照しつつ多角的にお話しいただきました。質疑応答では、さらに明治から大正にかけて展開された渋沢の多岐に渡る活動をめぐっても議論が弾みました。一言に不世出の天才的事業家と見なされがちな渋沢の、辛抱強く堅実に自分の仕事をこなしていく姿が新鮮な印象を残すお話しでした。

次回12月は、講師に日本語教育の専門家をお迎えします。この数年、世界のさまざまな地域から、留学や仕事で日本を訪れる外国人が激増しています。

どうぞ奮ってご参加ください。

1月の講演会は12日(第2土曜日)に開催します。朝鮮半島の現状をめぐってお話頂く予定です。

詳細は追ってお知らせいたします。


総じて気温の高かった秋が暮れて、師走月を迎えようとしています。寒い朝に手に取るマフラーの感触や夜道の居酒屋の赤い灯火が、なんとなく心を温めてくれる気がします。忘年会シーズンも目前です。温もりある極月をお過ごしくださいますように。

―寄鍋や隣も小さきクラス会(栗原政子)

 

事務局だより(2018年10月24日)

10月の講演会は、9月のハルビンに続き、やはり中国東北部の瀋陽と大連、新京に焦点を当てていただきました。「満鉄の世界」の過去を現代から透かし見るようなお話しから、巨大な植民地近代の残像が浮かび上がってきました。
次回11月は、渋沢栄一資料館の学芸員の方をお迎えして、幕末1867年の徳川昭武に同行し、パリ万博へ赴いた渋沢栄一の旅路についてご講演いただきます。
どうぞ奮ってご参加ください。

12月の講演会は22日(第4土曜日)に開催します。日本語教育の専門家の方をお招きしてお話を伺います。
詳細は追ってお知らせいたします。


箕作麟祥『萬國新史』の翻刻版が好評発売中です。日経新聞の文化欄に紹介がありますので、記事を紹介いたします。

日本経済新聞(2018年10月2日)

日脚がつとに早くなりました。一仕事を終えて窓外に目をやると、もうすっかり暗くなった街路が広がっています。まだ寒いというほどではない長い夜の時期の交友や飲食は、ひときわ味わい深いように感じられます。

―秋の夜や紅茶をくぐる銀の匙 (日野草城)

事務局だより(2018年10月3日)

前回9月の講演会では、講演者が7月に視察の旅をされた中国東北部からハルビンに焦点を当ててお話しいただきました。関東軍第731部隊による残虐行為の史跡や満蒙開拓団の犠牲が偲ばれる慰霊碑などが語る歴史のたいへんな重さに、実態をより明らかにする資料の開示が求められることを痛切に感じました。
次回講演会では、9月講演の後編として、瀋陽と大連を中心にお話しいただきます。
どうぞ奮ってご参加ください。

11月の講演会は、10日(第2土曜日)に開催を予定しています。渋沢資料館から学芸員の方をお迎えし、渋沢栄一の1867年パリ万国博覧会の旅についてお話しを伺います。
詳細は追ってお知らせいたします。


春夏が育んだ自然の恵みが食卓を彩る季節です。猛暑から豪雨を経て少しづつ澄んでいく空の下を山里へと、都会の街角へと秋の豊穣を求めて歩んでいきたくなります。満ち足りたものが皆さまのなかに静かに広がってゆくような秋の日々を。

―秋風、行きたい方へ行けるところまで(山頭火)