事務局だより(2016年4月20日)

4月の講演会では、宝生流の能楽を学ばれる講演者の方をお迎えしました。ヨーロッパの舞台芸術や音楽と比較しながら、能の舞台装置や演者の所作の背後にある世界観を、象徴劇のそれとしての解き明かしていただきました。芸術の一形態としてだけでなく、世界を見る眼差し、心身の処し方までを含む能の広い教えに触れた思いがいたします。
次回5月は、近年、世界史の大きなトピックとして扱われるようになった「人の移動」の代表的な事例である「移民」について、日本人の海外移民を中心にお話しいただきます。どうぞ奮ってご参加ください。

次々回、6月の講演会は、6月11日(第2土曜日)午後4時からの開催です。21世紀に入って、歴史の過重が紛争を拡大させているかのような中東の現況を解説していただきます。
詳細は追ってお知らせいたします。


桜花が去り、百穀を生化するという春雨を浴びた緑が勢いを増していっています。皆さまにおかれましても、命の勢いあらたな日々をお楽しみください。

―昼の月風は若葉の上にあり(正岡子規)

第129回講演会のお知らせ

人の移動から見た近代日本のグローバリゼーションと多文化主義
――「移民・難民」問題の理解のために

日付: 2016年5月14日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
広内 俊夫 (ひろうち としお)氏(NPO法人SV経験を活かす会会員、本フォーラム会員)
NPO法人SV経験を活かす会会員、本フォーラム会員大学で物理学を専攻。
企業でコンピュータ開発に従事する傍ら、世界の歴史、地理、文化に関心を示す。退職後、JICAの国際協力活動に参加し、南米パラグアイで「移民史編纂」、その後、出身会社の「社史編纂」に携わる。現在はNPO法人SV経験を活かす会で「シニアの挑戦!国際協力の現場を語る」等の図書の編纂を担当する。

概要:
人類の歴史は「民族の移動・興亡の歴史」と云われています。教科書ではあまり取り上げられることのない移民の歴史を、「人の移動」の視点から考察します。
今年は日本人海外渡航の解禁からちょうど150年。近代日本の海外移民は明治とともに始まり、ふたつの流れがあります。アジア太平洋とアメリカ大陸。このふたつの地域への移民の流れは同時並行的に興ったものです。アジア太平洋の日系社会は戦争で崩壊しましたが、アメリカ大陸(中南米)においては戦後、日本人移民は苦難を乗り越え、豊かな日系社会を実現しました。
この両地域への日本人移民の歴史を近代日本のグローバリゼーションの中に位置づけ、その全体像を体系的に図示したいと思います。
また近年、古くて新しい「移民・難民」問題がクローズアップされています。移民について考えることは日本の将来を考えることに繋がります。人の移動によるグローバリゼーションが国民国家に及ぼす影響や、多文化主義、多文化共生についても考えていきます。また、近代パラグアイの国民国家の形成についても触れてみたいと思います。