事務局だより(2018年1月24日)

 前回1月の講演会では、日本企業の駐在員として、家族と住みついたケニアの生活体験を当時の写真を交えながらお話しいただきました。高度経済成長期を経て、海外、特に発展途上の国々に進出していった企業人の公私の情景を興味深く拝聴しました。
 次回の講演会では、海外に渡ったアメリカの女性宣教師たちの日記や書簡といった個人的文書を踏まえながら、従来の大きな枠組みとは異なる相貌のもとに、国民や国家間の歴史についてご考察いただきます。

 3月の講演会は3日(第1土曜日)になります。北方領土(南千島諸島)をめぐるお話を伺う予定です。また、4月のテーマは沖縄です。
 詳細は追ってお知らせいたします。


 本年も皆さまのご指導ご鞭撻を請いつつ、本NPOを運営してまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 大寒以降、例年に比べても冷え込みの厳しい日が続いています。健康にご配慮しつつ、歳寒の生活をお楽しみください。

―雪をよろこぶ児らにふる雪うつくしき(山頭火)

第148回講演会のお知らせ

エゴ・ドキュメントからとらえるトランスナショナル・ヒストリー:アメリカ合衆国の女性宣教師が見た両大戦間期の国際関係

日付: 2018年2月10日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
佐々木 一惠(ささきもとえ)氏
 現在、法政大学国際文化学部准教授で専門はアメリカ史です。ジェンダーの視点から宗教と社会運動を考える研究に取り組んでいます。昨年までは、20世紀初頭のアメリカ人女性宣教師の中国における活動に関する研究を行ってきました。アメリカ合衆国が帝国主義列強の一員として国際社会でのプレゼンスを高めるなか、プロテスタント教会による海外宣教活動が「グローバル近代」のリベラリズムやジェンダー・ポリティクスを内在化していった過程を分析した単著Redemption and Revolution: American and Chinese New Women in the Early Twentieth Century (Cornell University Press, 2016)を出版しました。現在は、20世紀転換期のニューヨーク市を事例に、20世紀転換期のアメリカ合衆国におけるプロテスタント教会と世俗主義の関係を分析することで、この時期におけるプロテスタンティズムの変容とアメリカ市民社会の再編の相互連関性を明らかにしていく研究に取り組んでいます。

概要:
 昨今、「大きな物語(メタナラティブ)」としての国民史(ナショナル・ヒストリー)や国家間の関係に注目した外交史や国際関係史を批判的に乗り越える試みとして、トランスナショナル・ヒストリーという分野の研究が進んでいます。今回の発表では、エゴ・ドキュメントと呼ばれる日記、書簡、自伝、回想録などの一人称語りの自己文書から、このトランスナショナル・ヒストリーにアプローチしていこうと思います。
 対象とするのは、アメリカ合衆国のプロテスタント教会の海外宣教師として、両大戦間期に中国に渡った女性たちです。彼女たちは、家庭ではなく外の世界で生きていくことを目指した、いわゆる「新しい女」でもありました。今回の発表では、拙著『Redemption and Revolution』を下敷きに、近代的な女性主体の形成と進歩史観に彩られた「大きな物語」との間の連関性・矛盾・齟齬を、女性宣教師たちの語りの中から探っていく予定です。