第164回講演会のお知らせ

「『萬國新史』の翻刻を通して(仮)」

日付: 2019年9月14日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
南塚信吾氏、稲野強氏、木村真氏

講演者プロフィール:
南塚信吾 氏 世界史研究所所長、歴史文化交流フォーラム理事長
稲野強 氏  世界史研究所特別研究員
木村真 氏 世界史研究所研究員

概要:
 世界史研究所では、昨年夏に、箕作麟祥の『萬國新史』(1871-77)を翻刻し、自費出版しました。明治初期、江戸期の蘭学一辺倒から、英仏独露等の言語を通して得た情報を考察する洋学へと、知識の扉が大きく開かれました。箕作は卓越した語学力を活かし、数カ国語の世界史関連書籍を熟読消化して、当時としては驚くほど質の高い世界史を上梓することに成功しています。
 講演では、まず、同書が同時代に持った意義やその後の日本の世界史研究上に占める位置などを中心に、南塚信吾氏にお話しいただきます。次いで、同書のおもにバルカン地域の叙述をめぐって木村真氏が、さらにドイツやオーストリアの叙述について稲野強氏が、それぞれご専門の立場から検討してくださいます。

第163回講演会のお知らせ

「ユダヤ史のなかの東アジア」

日付: 2019年7月13日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
丸山 直起(まるやま なおき)氏

講演者プロフィール:
丸山直起(まるやま なおき)氏
 1942年長野県生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。法学博士。小樽商科大学、国際大学をへて明治学院大学法学部勤務。明治学院大学名誉教授。
 専門は国際政治学。著書に『ホロコーストとアメリカ』(みすず書房、2018年)、『太平洋戦争と上海のユダヤ難民』(法政大学出版局、2005年)など。

概要:
 ユダヤ人、シオニズムそれにイスラエルに関して書かれた歴史書において東アジアが言及されることはほとんどない。欧米の多くの研究者が歴史の舞台に取り上げるのは地中海地域やヨーロッパである。たしかに東アジアのユダヤ人人口は無視しうるほどであり、ユダヤ人の運命を決めた重大事件はヨーロッパおよびその周辺で起きている。だが、東アジアは軽視されていい地域かというとそれは間違っている。強調したいことは、近代ユダヤ史のなかで東アジア、とくに中国や日本の重要性にもっと光があてられるべきであろうという点である。
 この視点からユダヤ人と中国、日本を中心とする東アジアとのかかわりについて、つぎの時期にわけて報告したい。
1 日露戦争期
2 第一次世界大戦期
3 ホロコースト期
4 戦後期

第162回講演会のお知らせ

「旅から見るインドとネパール」

日付: 2019年5月11日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
宮崎 智絵(みやざき ちえ)氏

講演者プロフィール:

宮崎智絵氏(大学講師)
専門は宗教社会学、比較文化、比較宗教。インドの宗教と社会を中心に研究。立正大学文学部助手を経て、立正大学・二松学舎大学・日本大学理工学部で講師。インドのヴァラナシィをいろいろな視点で調査している。論文に「インドにおける日本人女性の結婚とコミュニケーションの行為選択」(二松学舎大学国際政経論集第19号)「インドにおける宗教的マイノリティと日本人女性の結婚」(二松学舎大学論集59号)などがある。

概要:
2月から3月にかけてインド・ネパールを旅した。広大なインドは一部しか行けなかったが、長年、インドを旅してきたからこそ見えてくる風景がある。まず、インドを旅する日本人の変化である。ひと昔前までインドは、世界中を旅したバックパッカーが最後に来るところであった。そして、古くは三島由紀夫、次に藤原新也、沢木耕太郎、小林紀晴等の作品に刺激されてインドに来た。さらに番組の企画でユーラシア大陸を横断した猿岩石のマネをしてインドを旅する大学生が急増した。だが、近年は内向きの学生が多く、危険を犯してまで旅する意味を見出せない学生はインドにあまり来なくなった。その間、インドは経済封鎖からBRICsの一員として目覚ましい経済発展をしている。また、ネパールは、昔はインドを旅する人が疲れを癒すところであり、ネパールで英気を養い、再びインドに挑戦するところであった。しかし、ネパールは王制から民主主義へと変わり、混乱し、政治的には不安定な時期が続いた。このように変化してきたインドとネパールについて旅人という視点からご紹介したいと思う。

 

第161回講演会のお知らせ

「プラスチック問題の真実-マイクロプラスチックによる海洋汚染と、中国の廃プラ輸入禁止の影響-」

日付: 2019年4月13日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
杉本 裕明(すぎもと ひろあき)氏

講演者プロフィール:
杉本裕明 氏
1954年生まれ。朝日新聞記者を経て、フリージャーナリスト。環境問題を中心に取材・執筆活動。著書に『ルポ にっぽんのごみ』(岩波書店)『ディーゼル車に未来はあるかー排ガス偽装とPM2.5の脅威』(同、共著)、『環境省の大罪』(PHP研究所)、『赤い土(フェロシルト) なぜ企業犯罪は繰り返されたのか』(風媒社)など多数。NPO法人未来舎代表理事。

概要:
最近、マスコミを騒がせているマイクロプラスチックによる海洋汚染問題。プラ製のストローを禁止したり、環境省が、プラスチック対策の戦略を策定したりしているが、これで問題は解決するのか。一方で、昨年から血中国が廃プラスチックの輸入禁止措置をとり、年間150万トン輸出していた廃プラは行き場がなくなり、国内各地に廃プラの山が顕在化。不法投棄が懸念されている。身近なプラスチックとどう付き合ったらいいのか。国や業界の動きを、歴史を踏まえながら解説する。

第160回講演会のお知らせ

『『共同の力:1970-80年代の金武湾闘争と生存思想』から見た運動史の課題』

日付: 2019年3月9日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
上原 こずえ(うえはら こずえ)氏

講演者プロフィール:
上原こずえ 氏(東京外国語大学世界言語社会教育センター特任講師)
1981年沖縄県生まれ。2006年から、金武湾反CTS闘争を組織した人びとの経験と思想について研究している。著書に『一人びとりが代表:崎原盛秀の戦後史をたどる』(Ryukyu, 2017年)。

概要:
沖縄国際大学ヘリ墜落事件が起き、辺野古新基地建設への圧力が強まるなかで呼び起こされた沖縄戦後社会運動史──そこには1970~80年代の沖縄で三菱による石油備蓄基地(CTS)の建設と立地先となる金武湾の埋め立てに抵抗した金武湾闘争の記憶があった。この金武湾闘争に留学先のハワイで出会ったのが2006年、それから12年近く沖縄での聞き取りや資料調査をもとに研究を行ってきたが、それがようやく今春に書籍として刊行される予定である。
この間──つまり2000年代から現在まで──の沖縄は基地建設という国策に抵抗する運動の渦中にあるが、こうした新たな行動のうねりのなかで金武湾闘争をはじめとする戦後社会運動史が読み直され、現場の行動を支える記憶として建て直される瞬間を目の当たりにしてきた。今回の講演では、2000年代以降の運動のなかで遭遇した金武湾闘争の経験と思想について映像なども交えて論じるとともに、これまでの研究から見えてきた運動史の課題についても議論したい。

第159回講演会のお知らせ

『アイヌ・北海道史から見た世界史;世界史から見たアイヌ・北海道史』

日付: 2019年2月2日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
吉嶺 茂樹(よしみね しげき)氏

講演者プロフィール:
吉嶺茂樹 氏
北海道有朋高等学校(通信制)教諭
1962年福岡県生まれ。西南学院高校・熊本大学文学部・熊本大学大学院文学研究科(西洋史学専攻)修了。
1986年より北海道の公立高校勤務。高大連携歴史教育研究会運営委員(会報担当)。上記の他に、共著に『世界史を動かしたモノ辞典』(日本実業出版社)、『お金の世界史200問』、(NHK出版)東京書籍『世界史A』(編集協力者)等。

概要:
昨年夏、『今学ぶアイヌ民族の歴史』(山川出版社)を上梓した。約15年がかりの作業であった。私は高校の世界史教員の立場から、本書の前近代史(主に日本史の江戸時代にあたる)を分担執筆した。アイヌ史や北海道史は、日本史の枠組みのみで考えると、見えなくなる内容が多いからである。さらに教室でのアイヌ史実践を広げていくためには、これまでのアプローチとは少し違う方向から考え直す必要があるとかねてから考えてきた。本書には、その内容を一部、織り込むことができたと思っている。新学習指導要領で高校の必修科目となる「歴史総合」を考える際には、高校一年段階で「歴史を総合するとはどういう営みなのか」が分かるような内容が必要であるが、アイヌ・北海道史にはその可能性がたくさんあると筆者は考えている。
今回の講演では、実際の史資料を基に、このような問題を考えてみたい。さらに、本書に織り込むことができなかった「北方に関する地図認識の問題」や、現地での調査スライドなども用いて、高校現場での多様な歴史教育のあり方についても考えてみたい。

第158回講演会のお知らせ

『韓半島の平和構築と東北アジア地域主義 ―「分断体制」の克服と日韓「ミドルパワー外交」の可能性』

日付: 2019年1月12日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
権容奭(クォン・ヨンソク)氏

講演者プロフィール:
権容奭(クォン・ヨンソク)氏
一橋大学大学院法学研究科教員。早稲田大学韓国学研究所招聘研究員。1970年、韓国・ソウル生まれ。子供の頃から父親の仕事の都合で日韓を行き来、日韓の「境界人」として生きている。専門は日本外交史、東アジア国際関係史、日韓関係史、韓国現代史。映画・音楽など日韓のポピュラー・カルチャーやサッカーなどスポーツにも詳しい。
著書に『岸政権期のアジア外交―対米自主とアジア主義の逆説』、『「韓流」と「日流」――文化から読み解く日韓新時代』(NHKブックス)、訳書に『イ・サンの夢見た世界――正祖の政治と哲学』(上・下、キネマ旬報社)、監訳書に『沸点―ソウル・オン・ザ・ストリート』(ころから、2016)などがあり、文在寅韓国大統領の自伝『運命―文在寅自伝』(岩波書店、2018)に「運命に導かれたキャンドル大統領―文在寅政権の歴史的位相」と題する解説文を掲載している。

概要:
 2018年に歴史的な南北/米朝首脳会談が開催され、「韓半島」は和解と融和への一歩を踏み始めています。「終らない戦争」となった朝鮮戦争を終結させ、長きにわたってこの地域を規定した「分断体制」を克服し、韓半島および北東アジアに平和を構築し、共生と繁栄をもたらす北東アジア地域主義を再起動させる絶好のあるいは最後の機会が訪れているともいえます。このような韓半島の新情勢についての現状分析と、韓国・文在寅政権のイニシアチブの歴史的意義および日本ではあまり知られていない南北交流の実態について、映像なども紹介しながらお話したいと思います。次に、2018年の平昌冬季五輪、2020年の東京五輪、2022年の北京冬季五輪と日中韓で立て続けにオリンピックが開催されるなど、ここ数年は北東アジア地域主義の進展にとっての「ゴールデンタイム」といえます。とりわけ、日本と距離的に最も近く歴史的文化的に密接な関係にありながらも、日本のパスポートで唯一行けない国である北朝鮮との「和解」と関係正常化に向けて、東京五輪はまたとない機会といえます。戦後日朝関係の歴史も紐解きながら、日朝国交正常化への道筋を模索し、韓半島の平和構築と北東アジアに向けての日韓の役割と連携の可能性について、「ミドルパワー外交」という観点から考えてみたいと思います。日本と韓半島の関係は大変こじれていて、今が「正念場」だともいえますが、こういうご時期だからこそ、地道に冷静に歴史的観点を踏まえた市民レベルでの議論と対話が必要だと思います。試みに、Korean Peninsulaに当たる地域概念として、日本で固定化されたイメージと偏見を内包する「朝鮮半島」ではなく、「韓半島」という概念を用いることから始めてみたいと思います。

第157回講演会のお知らせ

『『やさしい日本語』でコミュニケーションしよう』

日付: 2018年12月22日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
近藤 正憲(こんどう まさのり)氏

講演者プロフィール:
近藤正憲 氏
歴史文化交流フォーラム世界史研究所特別研究員。
青年海外協力隊員を皮切りに主として海外で日本語教師として活動。
国際交流基金専門家、上級専門家としてチェコ、イラン、ウズベキスタンで日本語を教える。現在龍谷大学、立命館大学で留学生対象の日本語教育担当。
他機関での日本語教師養成にも関わる。

概要:
「やさしい日本語」とは、普通の日本語情報に、「人為的な加工」を施して、
多くの人にとって理解しやすい情報にする取り組みです。外国人、高齢者、身体障害者といった情報弱者に必要な情報を提供し、また彼らの伝えたい情報をくみとることができるようになります。
大規模災害の際の情報提供はもちろん、平時における自分たちのコミュニケーションスタイルの見直し、外国籍住民との交流や、インバウンド観光客へのアプローチなど、様々な面での応用が可能です。
今回は「外国人」(非母語話者)の発する「変な日本語」の理解の仕方、そして「やさしい日本語」のつくり方をご紹介します。
「やさしい日本語」は難行ではなく易行です。そして「やさしい日本語」はやさしい日本人の心の中にあります。

(例)
「避難所(ひなんじょ)」→みんなが逃(に)げるところ
「炊き出し(たきだし)」→温(あたた)かい食(た)べ物(もの)を作(つく)っ
て配(くば)る
出典:弘前大学人文学部社会言語学研究室『増補版「やさしい日本語」作成
のためのガイドライン』

第156回講演会のお知らせ

『渋沢栄一、パリ万国博覧会へ行く』

日付: 2018年11月10日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
関根 仁(せきね ひとし)氏

講演者プロフィール:
関根仁 氏(渋沢史料館学芸員)
中央大学大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程単位取得退学。2003年より現職。専門は日本近代史。渋沢史料館では、幕末の渋沢栄一の渡欧および『航西日記』の解読と編纂過程を研究。主な担当展覧会として「渋沢栄一、アメリカへ~100年前の民間経済外交~」(2009年)、「渋沢栄一と『実業之日本』」(2011年)、「徳川慶喜公伝と渋沢栄一」(2013年)、「渋沢栄一渡仏150年 渋沢栄一、パリ万国博覧会へ行く」(2017年)など。

概要:
慶応3年(1867)3月7日、渋沢栄一はフランス・パリに到着しました。
栄一は当時27歳の幕臣で、パリ万国博覧会に参列する将軍徳川慶喜の弟・昭武に随行していたのです。栄一にとって初めての異国旅。約1年半におよぶ滞在中、近代西洋社会は栄一の目に、どう映ったのでしょうか。
本講演では、パリから日本にいる妻や家族に宛てた手紙、日記など様々な資料から栄一の欧州体験をたどります。栄一にとって慶応3年の渡仏とは、どのような意味を持ったのかを、あらためて考える機会となれば幸いです。

第155回講演会のお知らせ

『中国・東北のいま―「戦争」と「現代化」―』(後編)

日付: 2018年10月20日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
南塚信吾(みなみづか しんご)氏(歴史文化交流フォーラム理事長)
紺道樹義(こんどう きよし)氏(歴史文化交流フォーラム会員)

概要:
前回講演のハルビンに続いて、今回は瀋陽と大連をおもに取り上げる。瀋陽(旧奉天)は満州事変(九一八事変)の発端となった地であり、関東軍による奉天府政府が置かれたことで名高い。現地には日本戦犯特別軍事裁判所跡や九一八歴史博物館などがある。また大連には、満州経営の中核を担った一大コンツェルン南満州鉄道の本社があった。その一部は現在、満鉄旧跡陳列館として公開されている。日本に馴染みの深い魯迅の名を冠した通りや日本風情街などには日中の密接な関わりが刻印されているかのようだ。9月講演会同様、映像を用いて、歴史を現在に繋ぎながら話しを進めたい。前回9月に引き続き、おもに南塚が報告を行い、同行者であった紺道が追加説明をする。