事務局だより(2019年2月19日)

 2月の講演会では、高校で必修化される新科目「歴史総合」に向けて、アイヌ史を基点に、歴史を世界史的にとらえる試みを提示していただきました。さまざまな場所から語り得る世界史像という発想自体が、新鮮な刺激でした。また、講演者に示していただいた『宗谷場所御引渡目録』や蠣崎波響の「夷酋列像」図も興味深く、文書を読み解くことから始まる歴史研究の面白さを堪能しました。
 次回3月は、沖縄返還後すぐに起こった住民運動である金武湾闘争に焦点を当ててお話しいただきます。日米両政府の国策の狭間で住民の権利を主張したこの闘争は、現在の辺野古埋め立てに抗する運動を歴史的に理解するうえでも、とても重要な指針になると思います。
 どうぞ奮ってご参加ください。
 4月の講演会は13日(第2土曜日)に開催します。環境、とくにごみ問題について活発な発言を続けていらっしゃるジャーナリストの方を講演者にお迎えする予定です。
 詳細は追ってお知らせいたします。


 まだ冷たい大気のなかで、開き始めた梅や桃の花が、街や野のところどころにほんのり暖かい色どりを添えています。コートの前を開いて、光量を増す陽射しを抱き留めたくなる日が増えてくることでしょう。新たな自然の躍動の兆しに、心華やぐ時が多からんことを願います。

―うれしさは春の光を手に掬(すく)ひ (野見山朱鳥)

第160回講演会のお知らせ

『『共同の力:1970-80年代の金武湾闘争と生存思想』から見た運動史の課題』

日付: 2019年3月9日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
上原 こずえ(うえはら こずえ)氏

講演者プロフィール:
上原こずえ 氏(東京外国語大学世界言語社会教育センター特任講師)
1981年沖縄県生まれ。2006年から、金武湾反CTS闘争を組織した人びとの経験と思想について研究している。著書に『一人びとりが代表:崎原盛秀の戦後史をたどる』(Ryukyu, 2017年)。

概要:
沖縄国際大学ヘリ墜落事件が起き、辺野古新基地建設への圧力が強まるなかで呼び起こされた沖縄戦後社会運動史──そこには1970~80年代の沖縄で三菱による石油備蓄基地(CTS)の建設と立地先となる金武湾の埋め立てに抵抗した金武湾闘争の記憶があった。この金武湾闘争に留学先のハワイで出会ったのが2006年、それから12年近く沖縄での聞き取りや資料調査をもとに研究を行ってきたが、それがようやく今春に書籍として刊行される予定である。
この間──つまり2000年代から現在まで──の沖縄は基地建設という国策に抵抗する運動の渦中にあるが、こうした新たな行動のうねりのなかで金武湾闘争をはじめとする戦後社会運動史が読み直され、現場の行動を支える記憶として建て直される瞬間を目の当たりにしてきた。今回の講演では、2000年代以降の運動のなかで遭遇した金武湾闘争の経験と思想について映像なども交えて論じるとともに、これまでの研究から見えてきた運動史の課題についても議論したい。