事務局だより(2019年8月23日)

7月の講演会では、東アジア地域におけるユダヤ人の歴史と活動についてお話しいただきました。日露戦争や第一次世界大戦、そして第二次世界大戦の時代に、アジアに居住するユダヤ人がどのように生き、日本といかような関わりを持ったのか、欧米中心のユダヤ史からは抜け落ちていた箇所に光を当てていただきました。また、近代以前からユダヤ人が住み着いていたという中国の開封や、20世紀前半に際立った経済活動を展開した上海に残るその足跡など、お見せいただいた写真も大変に興味深いものでした。

9月は、歴史文化交流フォーラムに属する世界史研究所が翻刻した箕作麟祥編『萬國新史』をめぐって、翻刻に携わった研究所を代表して3名の方からお話しをうかがいます。なお、この9月講演会をもって、本フォーラムの月例講演会は終了となります。

どうぞ奮ってご参加ください。


熱暑のつらさに吐息をもらしながらも、ふと気付かされる晩夏の気配には一抹の寂しさを覚えるこの頃です。

2004年2月以来続けてまいりました月例講演会も、会場となってきたビルの解体にともない、9月が最後となってしまいました。長くご支援いただいた皆さまのご支援ご厚恩に拝謝いたします。本フォーラムの講演会は終了しても、人の営みが積み上げる歴史や文化を経巡る私たちの好学の旅は続いていくことでしょう。別の場所、異なる機会で皆さまにお会いできる日が来ることを信じつつ。

―遠花火まだ一仕事残る街 (小沢昭一)

第164回講演会のお知らせ

「『萬國新史』の翻刻を通して(仮)」

日付: 2019年9月14日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
南塚信吾氏、稲野強氏、木村真氏

講演者プロフィール:
南塚信吾 氏 世界史研究所所長、歴史文化交流フォーラム理事長
稲野強 氏  世界史研究所特別研究員
木村真 氏 世界史研究所研究員

概要:
 世界史研究所では、昨年夏に、箕作麟祥の『萬國新史』(1871-77)を翻刻し、自費出版しました。明治初期、江戸期の蘭学一辺倒から、英仏独露等の言語を通して得た情報を考察する洋学へと、知識の扉が大きく開かれました。箕作は卓越した語学力を活かし、数カ国語の世界史関連書籍を熟読消化して、当時としては驚くほど質の高い世界史を上梓することに成功しています。
 講演では、まず、同書が同時代に持った意義やその後の日本の世界史研究上に占める位置などを中心に、南塚信吾氏にお話しいただきます。次いで、同書のおもにバルカン地域の叙述をめぐって木村真氏が、さらにドイツやオーストリアの叙述について稲野強氏が、それぞれご専門の立場から検討してくださいます。