事務局だより(2018年12月26日)

 12月の講演会では、日本語ネイティヴではない日本在住者とコミュニケートする際の言葉遣い(=気遣い)のコツを、豊富な具体例を引きつつ、お話しいただきました。ネイティヴゆえに看過しがちな「やさしい日本語」が、外国人だけでなく日本人も含む他者一般にたいするやさしさから作られていくことに改めて気付かされる講演でした。

 次回1月は、日韓の「境界人」として生きる講演者をお迎えし、大きな転換期を迎えている韓国と北朝鮮の現況を分析していただきます。同時に、歴史問題等で両国との関係が混迷を深めている日本を含めて、北東アジアの平和と安定に向けた思考とアクションの可能性について語っていただきます。

どうぞ奮ってご参加ください。

2月の講演会は2日(第1土曜日)に開催します。アイヌから見た世界史像を中心にお話しいただく予定です。

詳細は追ってお知らせいたします。


 ひとの社会が時間を分節し、歴史を刻むことで成り立っていることをとりわけ意識させられる時期を迎えました。
 今年も皆さまからはご支援と励ましの声を数多くいただきました。深謝申し上げるとともに、皆さまの明るさに満ち満ちた年末年始を祈念いたします。

―かるがると上る目出度し餅の杵(高浜虚子)

第158回講演会のお知らせ

『韓半島の平和構築と東北アジア地域主義 ―「分断体制」の克服と日韓「ミドルパワー外交」の可能性』

日付: 2019年1月12日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
権容奭(クォン・ヨンソク)氏

講演者プロフィール:
権容奭(クォン・ヨンソク)氏
一橋大学大学院法学研究科教員。早稲田大学韓国学研究所招聘研究員。1970年、韓国・ソウル生まれ。子供の頃から父親の仕事の都合で日韓を行き来、日韓の「境界人」として生きている。専門は日本外交史、東アジア国際関係史、日韓関係史、韓国現代史。映画・音楽など日韓のポピュラー・カルチャーやサッカーなどスポーツにも詳しい。
著書に『岸政権期のアジア外交―対米自主とアジア主義の逆説』、『「韓流」と「日流」――文化から読み解く日韓新時代』(NHKブックス)、訳書に『イ・サンの夢見た世界――正祖の政治と哲学』(上・下、キネマ旬報社)、監訳書に『沸点―ソウル・オン・ザ・ストリート』(ころから、2016)などがあり、文在寅韓国大統領の自伝『運命―文在寅自伝』(岩波書店、2018)に「運命に導かれたキャンドル大統領―文在寅政権の歴史的位相」と題する解説文を掲載している。

概要:
 2018年に歴史的な南北/米朝首脳会談が開催され、「韓半島」は和解と融和への一歩を踏み始めています。「終らない戦争」となった朝鮮戦争を終結させ、長きにわたってこの地域を規定した「分断体制」を克服し、韓半島および北東アジアに平和を構築し、共生と繁栄をもたらす北東アジア地域主義を再起動させる絶好のあるいは最後の機会が訪れているともいえます。このような韓半島の新情勢についての現状分析と、韓国・文在寅政権のイニシアチブの歴史的意義および日本ではあまり知られていない南北交流の実態について、映像なども紹介しながらお話したいと思います。次に、2018年の平昌冬季五輪、2020年の東京五輪、2022年の北京冬季五輪と日中韓で立て続けにオリンピックが開催されるなど、ここ数年は北東アジア地域主義の進展にとっての「ゴールデンタイム」といえます。とりわけ、日本と距離的に最も近く歴史的文化的に密接な関係にありながらも、日本のパスポートで唯一行けない国である北朝鮮との「和解」と関係正常化に向けて、東京五輪はまたとない機会といえます。戦後日朝関係の歴史も紐解きながら、日朝国交正常化への道筋を模索し、韓半島の平和構築と北東アジアに向けての日韓の役割と連携の可能性について、「ミドルパワー外交」という観点から考えてみたいと思います。日本と韓半島の関係は大変こじれていて、今が「正念場」だともいえますが、こういうご時期だからこそ、地道に冷静に歴史的観点を踏まえた市民レベルでの議論と対話が必要だと思います。試みに、Korean Peninsulaに当たる地域概念として、日本で固定化されたイメージと偏見を内包する「朝鮮半島」ではなく、「韓半島」という概念を用いることから始めてみたいと思います。

2017年度財務諸表を公開します

さる11月10日に、本歴史文化交流フォーラムの「第16回総会」が行われ、
2017年度事業報告と会計報告、ならびに2018年度事業計画案と予算案が審議されました。

いずれも会員総数の過半数を越える賛成で可決されました。

2017年度の財務諸表を以下に掲載いたします。

2017年度財務諸表

追悼 蓮沼泰子さん

わたしたち歴史文化交流フォーラムのメンバーである蓮沼泰子さんが、2019年8月1日に亡くなりました。蓮沼さんには、現フォーラムの前身であった東欧文化フォーラム時代からおよそ30年に渡って、熱心に活動にご尽力いただいたほか、書道の会でもご指導をいただきました。

12月1日に、歴史文化交流フォーラムの主催で、蓮沼泰子さんをしのぶ会を行いました。しのぶ会での南塚理事長の追悼文「書家としての蓮沼泰子」を以下に掲載いたします。

「書家としての蓮沼泰子」