『韓半島の平和構築と東北アジア地域主義 ―「分断体制」の克服と日韓「ミドルパワー外交」の可能性』
日付: 2019年1月12日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)
講師:
権容奭(クォン・ヨンソク)氏
講演者プロフィール:
権容奭(クォン・ヨンソク)氏
一橋大学大学院法学研究科教員。早稲田大学韓国学研究所招聘研究員。1970年、韓国・ソウル生まれ。子供の頃から父親の仕事の都合で日韓を行き来、日韓の「境界人」として生きている。専門は日本外交史、東アジア国際関係史、日韓関係史、韓国現代史。映画・音楽など日韓のポピュラー・カルチャーやサッカーなどスポーツにも詳しい。
著書に『岸政権期のアジア外交―対米自主とアジア主義の逆説』、『「韓流」と「日流」――文化から読み解く日韓新時代』(NHKブックス)、訳書に『イ・サンの夢見た世界――正祖の政治と哲学』(上・下、キネマ旬報社)、監訳書に『沸点―ソウル・オン・ザ・ストリート』(ころから、2016)などがあり、文在寅韓国大統領の自伝『運命―文在寅自伝』(岩波書店、2018)に「運命に導かれたキャンドル大統領―文在寅政権の歴史的位相」と題する解説文を掲載している。
概要:
2018年に歴史的な南北/米朝首脳会談が開催され、「韓半島」は和解と融和への一歩を踏み始めています。「終らない戦争」となった朝鮮戦争を終結させ、長きにわたってこの地域を規定した「分断体制」を克服し、韓半島および北東アジアに平和を構築し、共生と繁栄をもたらす北東アジア地域主義を再起動させる絶好のあるいは最後の機会が訪れているともいえます。このような韓半島の新情勢についての現状分析と、韓国・文在寅政権のイニシアチブの歴史的意義および日本ではあまり知られていない南北交流の実態について、映像なども紹介しながらお話したいと思います。次に、2018年の平昌冬季五輪、2020年の東京五輪、2022年の北京冬季五輪と日中韓で立て続けにオリンピックが開催されるなど、ここ数年は北東アジア地域主義の進展にとっての「ゴールデンタイム」といえます。とりわけ、日本と距離的に最も近く歴史的文化的に密接な関係にありながらも、日本のパスポートで唯一行けない国である北朝鮮との「和解」と関係正常化に向けて、東京五輪はまたとない機会といえます。戦後日朝関係の歴史も紐解きながら、日朝国交正常化への道筋を模索し、韓半島の平和構築と北東アジアに向けての日韓の役割と連携の可能性について、「ミドルパワー外交」という観点から考えてみたいと思います。日本と韓半島の関係は大変こじれていて、今が「正念場」だともいえますが、こういうご時期だからこそ、地道に冷静に歴史的観点を踏まえた市民レベルでの議論と対話が必要だと思います。試みに、Korean Peninsulaに当たる地域概念として、日本で固定化されたイメージと偏見を内包する「朝鮮半島」ではなく、「韓半島」という概念を用いることから始めてみたいと思います。