事務局だより(2017年5月24日)

5月は、かつて日本の委任統治領であった南洋諸島のうち、グアム、ポンペイ、パラオ、サイパンの4島を中心に、植民と戦争の過去を辿るお話を伺いました。土地と人々の記憶に残る20世紀史の生々しい痕跡が、現代のわれわれの存立の基盤にも思いをいたさせるような、深い余韻を残す講演でした。

次回6月の講演会では、音楽学者であると同時に作曲家でもある講演者をゲストにお迎えします。確固とした底流の存在にもかかわらず、現在、顧みられる機会が多くない日露文化交流史ですが、講演では、ロシアの歌と日本の歌謡曲の繋がりというユニークな視座からお話しくださいます。

どうぞ奮ってご参加ください。

7月の講演会は、8日(第2土曜)16時から、幕末の横浜と上海の状況を比較検討するお話を予定しています。また、8月は事務局の海外出張等のため、月例講演会はお休みとさせていただきます。9月以降の予定は追ってお知らせいたします。


例年よりだいぶ早い夏日の到来に、日差しに手をかざし、汗をぬぐいながらの街出になった5月でした。いっぽうで、公園や家々の垣根越しには、早々と紫陽花が浅い色を帯び始めて、雨の季節が近づきつつあることを感じさせます。蒸し暑さが増していく季節ですが、健やかにお過ごしください。

―番傘の軽さ明るさ薔薇の雨(中村汀女)

第141回講演会のお知らせ

ロシアの歌、日本の歌~知られざる交流の歴史~

日付: 2017年6月10日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
森谷理紗(もりや・りさ)氏
芸術学(音楽学)Ph.D 3歳よりピアノを始める。東京藝術大学音楽学部楽理科、同大学院修士課程(音楽学)を経て渡露。グネーシン記念音楽大学研修後、チャイコフスキー記念モスクワ音楽院大学院で博士号(芸術学/音楽学)取得。同時に同音楽院作曲科3年に編入し、後卒業。2010年度日ロ青年交流センター若手研究者等派遣フェローシップ≪日本人研究者派遣≫受給。2011年モスクワ音楽家協会150周年記念音楽コンクール作曲部門グランプリ。2013年国際パイプオルガン作曲コンクール第3位(モスクワ音楽院)。2017年4月、著書『20世紀から21世紀初頭にかけての二つの音楽文化の相互作用:日本とロシア』(ロシア、サラトフ音楽院)出版。11年間のロシア生活を経て2017年帰国。

概要:
「遠き隣国」-ロシアと日本は21世紀の現在においても互いに未知の国というイメージがある。しかしながら、両国の文化面での交流は歴史の中で存在してきたし、今も存在している。今回の講座では、「歌」に焦点を当て、ロシアの歌が、戦後に日本人の「心の歌」とされる歌謡曲の黎明期に与えた影響について、音楽や映像資料とともに知られざる交流の歴史を紐解いていく。全く共通性がないと思われているロシアの歌と日本の歌謡曲のあいだには、戦後のシベリア抑留やうたごえ運動など、いくつもの歴史上の偶然がもたらした繋がりがあった。