事務局だより(2017年10月26日)

 前回10月の講演会では、南信州の阿南町和合地区に移り住み、集落支援員として「地域のこし」のために奮闘する講演者をお迎えしました。都市中心のグローバル化が地方社会を置き去りに進むなか、村落の丁寧な暮らしと、住民が伝承する生活に密着した文化の豊かさを活き活きと語っていただきました。東京在住の阿南長出身者の皆様にお集まりいただけたことも、大きな喜びでした。
次回11月は、ロシア革命から100年を迎えることから、ロシア映画を専門とする講演者をお迎えして、映像論の視野からロシア革命を論じていただきます。
どうぞ奮ってご参加ください。

12月の講演会は、16日(第3土曜日)に開催予定です。南チロルを中心としたお話を予定しています。講演会終了後には、恒例となっている忘年会を催します。こちらも奮ってご参加ください。
詳細は追ってお知らせいたします。


行楽シーズンを迎えながら、あいにく天候に恵まれない秋の日々です。ただ地域によっては、五色霜林を迎えるのはまだこれから。柔らかな秋の日差しが戻り、皆さまが穏やかな時を楽しまれますように。

―秋の暮川の向うに子守唄(秋元不死男)

 

第145回講演会のお知らせ

ロシア革命100周年に寄せて:映画に刻まれた革命の表象を基に

日付: 2017年11月11日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
佐藤千登勢氏(法政大学国際文化学部教員)
福島県生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。早稲田大学大学院文学研究博士課程修了。専門は文学理論・ロシア文学・ロシア映画。ロシア(ソ連)との初めての出会いは、子供の頃に聴いたショスタコーヴィチの「祝典序曲」(1947)。
著訳書に、『シクロフスキイ 規範の破壊者』(南雲堂フェニックス)、『映画に学ぶロシア語:台詞のある風景』(東洋書店)、タチヤナ・コトヴィチ『ロシア・アヴァンギャルド小百科』(共訳、水声社)。『ロシアNIS調査月報』(一般社団法人 ロシアNIS貿易会)に2014年12月号より映画コラムを連載中。

概要:
100年前の10月25日(旧暦)から翌日にかけて、世界初の社会主義革命がロシアで達成されました。
以来、11月7日(新暦)は革命記念日として毎年賑々しくかつ厳かに祝われてきたことは周知の事実です。しかし、ソ連が崩壊して社会主義の意義が損なわれたエリツィンの時代、この日は祝日ではあり続けましたが「和解と合意の日」と名前を変えました。1996年のことです。やがて第二次プーチン政権下では、革命記念日の影を引きずる11月7日が祝日から外され、代わりに、1612年にまで遡って、当時ポーランド軍に占領されていたモスクワがミーニンとポジャルスキー率いる義勇軍によって解放された11月4日を新たな祝日として設け、「民族統一の日」となっておりますね。この経緯ひとつをとってみても、今、ロシア革命100周年をどのように扱えばよいのか、どのように記念すればよいのか、ロシアの人々は戸惑いを感じるのではないでしょうか。国内では、この記念日を歴史的史実として懐古するような討論会、学会が開催されている様子はあまりなく、革命100周年に向けた歴史的出版物も目を引くものがありません。驚いたのは、革命期から1920年代初期にかけて開花したアヴァンギャルド芸術(絵画、映画、ロシア・フォルマリストの論考など)をめぐる展覧会や回顧展は、今年に入って其処彼処で開催され、関連書物が多く出版されていることです。ロシア革命の歴史的意義や功罪を問い直そうという試みや催しは、むしろ欧米や日本においてのほうが盛んである印象です。
さて、このたびは、歴史の専門家ではない私がロシア革命についてどんなお話ができるかと考えましたところ、ソ連時代から今日まで国内で制作されてきた映画には革命期のとりわけ内戦を背景にした作品が少なからずあることを思い出しました。これらの作品における革命の表象を通して、とくに革命に対する評価の逆転について着目し、映像の一部をみなさんと分かち合いたいと思います。