第154回講演会のお知らせ

『中国・東北のいま―「戦争」と「現代化」―』(前編)

日付: 2018年9月8日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
南塚信吾(みなみづか しんご)氏(歴史文化交流フォーラム理事長)
紺道樹義(こんどう きよし)氏(歴史文化交流フォーラム会員)

概要:
中国東北部は、言うまでもなく、日本の近現代史と深く重く結びついた地域である。特にハルビンは、安重根記念館や関東軍第731部隊の罪証陳列館が設けられているほか、満蒙開拓団の派遣ならびに引揚げに際しては拠点的位置づけを担った都市でもある。それら歴史の出来事を確認しながら、現在どのようにその史跡が扱われているのかを映像を交えて紹介しながら、問題点を歴史的に考察する。おもに南塚が報告を行い、同行者であった紺道が追加説明をする。

第153回講演会のお知らせ

水に関わる技術と福島への取組について

日付: 2018年7月14日(土)
時間: 16:00 – 17:30
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
酒井 英明(さかい ひであき)氏

1981年 早稲田大学理工学部機械学科卒業、同年 スギノマシンに入社。以降、原子炉内部遠隔点検装置、補修装置、原子燃料取扱設備の開発、 並びにウォータージェット噴流の研究に従事し、近年は、特殊環境用遠隔ロボット、ウォージェット切断装置、湿式微粒化装置の研究・開発に従事。

概要:
柔らかいイメージの水が高圧になると切断や洗浄や耐圧試験、並びに食品加工に利用されている状況を皆さんに知っていただくと伴に、当社の技術が福島でどのように活用されているのかをご説明させていただきたいと考えています。

 

第152回講演会のお知らせ

「無名戦士の墓」から「八紘一宇の塔」へ~クロアティア―日本:社会のための芸術を夢みた彫刻家たち

日付: 2018年6月9日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
越村 勲(こしむら いさお)氏
東京造形大学教授。研究テーマは、クロアティアなど東欧の社会・文化史。
著書・訳書:R・オーキー『東欧近代史』(勁草書房、1987年)、『東南欧農民運動史の研究』(多賀出版、90年)、Ph・E・モズリー『バルカンの大家族ザドルガ』(彩流社、94年)、D・ロクサンディチ『クロアティア=セルビア社会史断章』(彩流社、99年)、S・ノヴァコヴィチ『セロ――中世セルビアの村と家』(刀水書房、2003年)、『映画「アンダーグラウンド」を観ましたか』(彩流社04年)、新世界地理第10巻『ヨーロッパⅣ――東ヨーロッパ・ロシア』(朝倉書店06年)、『クロアティアのアニメーション』(彩流社、10年)、K・カーザー『ハプスブルク軍政国境の社会史』(学術出版会、13年)、『16・17世紀の海商・海賊-アドリア海のウスコクと東シナ海の倭寇』(彩流社、16年)。

概要:
・今回の講演の内容と趣旨:越村の近著『ウスコクと倭寇』は、16世紀に世界が結びつく中で、アドリア海と東シナ海で海賊と呼ばれた人々に光を当てる予定である。今回の講演はその近著の補論にあたり、20世紀のクロアティアと日本の芸術家が社会のための芸術という「夢」を分かち合ったことを確認し、それぞれがいかに異なった結末を迎えるか、そのターニングポイントはどこかを考えるものである。
 彫刻史や美術史ではなく、芸術思想の交流史であり、彫刻/美術と日本の社会との関係を後追う社会史である。

・三つの時期:(1)20世紀初めのウィーン分離派運動は社会に開かれた芸術を模索した。具体的に彫刻と建築を合わせて人々に見せることがそのテーマとされた。そしてこのテーマで作品を制作した代表的人物がイヴァン・メシュトロヴィチであり、その代表作が「セルビアの無名戦士の墓」である。かれとドイツ表現主義の芸術・建築は第一次世界大戦までに日本での紹介が始まった。
 (2)メシュトロヴィチとドイツ表現主義の影響は、第一次大戦直後の分離派建築会の創設、平和記念博によって増大し、1926年には彫刻家団体構造社が創設された。構造社は彫刻と建築の総合をうたった作品を共同で制作し展示した。
 (3)しかし日中戦争が始まって以降、構造社を脱会していた日名子実三は軍部との関係を強め、ついには1940年「八紘一宇の塔」を制作する。この塔の礎石は中国・南京などから集まられており、芸術作品でありながら政治的含意がきわめて深刻な作品になった。一方斎藤素巌は終戦とともに自己批判の作品を作り、その社会的発言も急速に減っていった。

・彫刻家たち:主な彫刻家は以下の四人だが、今日の日本ではほとんど知られていないメシュトロヴィチについて少し紹介しておく。今回のタイトルにある「無名戦士の墓」はそのメシュトロヴィチの作品。「八紘一宇の塔」は日名子実三の作品。いずれの作品も彫刻というよりも建築物といった方が正確かもしれない。
イヴァン・メシュトロヴィチ1883-1962
旧ユーゴスラビアの彫刻家。クロアチアのブルポーリェ村に生まれる。篤志家の援助を得て、17歳でウィーンに出、アカデミーでヘルマン・ヘルマーや建築家オットー・ワーグナーに学ぶ。とくに後者の影響を受け、分離派(ゼツェッション)運動に参加した。熱烈な愛国者で、彫刻と建築の統合を試みた記念像を多くつくり、「ユーゴのミケランジェロ」とうたわれた。・・・。
小学館 日本大百科全書(インターネット版)より
下掲の人名もご参照ください。
陽咸二(ようかんじ) 1898-1935
齋藤素巌(さいとうそがん) 1889-1974
日名子実三(ひなごじつぞう) 1893-1945

第151回講演会のお知らせ

三遠南信―県境を越えた地域連携の新ビジョン策定にあたって

日付: 2018年5月26日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
高柳 俊男(たかやなぎ としお)氏 (法政大学)
1956年、栃木県生まれ。現在、法政大学国際文化学部教授。
専門は朝鮮近現代史、在日朝鮮人史。1977年、朝鮮に関心を持つ人たちと市民グループ「鐘声の会」を結成。

概要:
三遠南信という概念があります。三河(愛知県東部)と遠江(静岡県西部)と南信(長野県南部)が、県境の枠を超えて政治・経済・文化面などで連携しようというものです。3地域の中心都市はそれぞれ豊橋市・浜松市・飯田市ですが、いずれも県庁所在地からは離れており、その条件を逆手に取ったようなユニークな発想です。
報告者は2011年7月、本会でご報告した通り、所属大学における学部プログラムとして、南信で留学生主対象の学生研修を担当しています。その関連で昨年、三遠南信圏域の39自治体が加盟するSENA(三遠南信地域連携ビジョン推進会議)の新10年ビジョン策定委員に任命されました。委員となったのを機に、県境を越えた地域連携である三遠南信について、その可能性と課題について整理してみます。とくに、三遠南信の範囲の問題や、中山間地域の厳しい現状を念頭に置きつつ、「こんなことができたら」という楽しいプランを考えたいと思います。

第150回講演会のお知らせ

戦前期沖縄の人と生活――『沖縄1935』を読む

日付: 2018年4月14日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
得能壽美(とくのう としみ)氏 (法政大学)
1957年静岡県清水市(当時)生まれ。日本大学大学院修了。都内出版社を経て、石垣市教育委員会に勤務。現在、法政大学大学院などで非常勤講師。著書に『近世八重山の民衆生活史』(2007)など、共著に『日本近世生活絵引 奄美・沖縄編』(2014)、『石垣市史 資料編近代8』「大浜町の歴史」(2017)など。

概要:
朝日新聞大阪本社の倉庫で発見された、1935年沖縄取材時の277コマのネガ。一般に戦前の写真は固まった集合写真が多く、また沖縄戦でほぼ焼失しただろうといわれているなかで、沖縄本島地方の広い地域にわたる庶民を生き生きと写し出した貴重な資料である。歴史・民俗の立場から、写された人々と生活を読み解いてみたい。
朝日新聞出版刊『沖縄1935』(2017年、1800+税)
朝日新聞デジタル「沖縄1935」http://www.asahi.com/special/okinawa/oldphoto/
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第149回講演会のお知らせ

北方領土を訪問して

日付: 2018年3月3日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
石橋 功(いしばしいさお)氏
神奈川の県立高校で、世界史を中心とした歴史教育に携わる。近年、大阪大学共同研究員として、高大連携歴史教育研究会での歴史用語精選案に係わる。著書に『世界史をどう教えるか』(共著 山川出版2008年)、『世界史A問題集』(総監修 山川出版2015年)、 『世界史B問題集』(総監修 山川出版2015年)などがある。

概要:
主に昨年8月に訪問した北方領土の色丹島訪問について報告します。その中で日本の領土問題について言及したいと考えています。また同時にソ連・ロシアの現代史についても言及します。

第148回講演会のお知らせ

エゴ・ドキュメントからとらえるトランスナショナル・ヒストリー:アメリカ合衆国の女性宣教師が見た両大戦間期の国際関係

日付: 2018年2月10日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
佐々木 一惠(ささきもとえ)氏
 現在、法政大学国際文化学部准教授で専門はアメリカ史です。ジェンダーの視点から宗教と社会運動を考える研究に取り組んでいます。昨年までは、20世紀初頭のアメリカ人女性宣教師の中国における活動に関する研究を行ってきました。アメリカ合衆国が帝国主義列強の一員として国際社会でのプレゼンスを高めるなか、プロテスタント教会による海外宣教活動が「グローバル近代」のリベラリズムやジェンダー・ポリティクスを内在化していった過程を分析した単著Redemption and Revolution: American and Chinese New Women in the Early Twentieth Century (Cornell University Press, 2016)を出版しました。現在は、20世紀転換期のニューヨーク市を事例に、20世紀転換期のアメリカ合衆国におけるプロテスタント教会と世俗主義の関係を分析することで、この時期におけるプロテスタンティズムの変容とアメリカ市民社会の再編の相互連関性を明らかにしていく研究に取り組んでいます。

概要:
 昨今、「大きな物語(メタナラティブ)」としての国民史(ナショナル・ヒストリー)や国家間の関係に注目した外交史や国際関係史を批判的に乗り越える試みとして、トランスナショナル・ヒストリーという分野の研究が進んでいます。今回の発表では、エゴ・ドキュメントと呼ばれる日記、書簡、自伝、回想録などの一人称語りの自己文書から、このトランスナショナル・ヒストリーにアプローチしていこうと思います。
 対象とするのは、アメリカ合衆国のプロテスタント教会の海外宣教師として、両大戦間期に中国に渡った女性たちです。彼女たちは、家庭ではなく外の世界で生きていくことを目指した、いわゆる「新しい女」でもありました。今回の発表では、拙著『Redemption and Revolution』を下敷きに、近代的な女性主体の形成と進歩史観に彩られた「大きな物語」との間の連関性・矛盾・齟齬を、女性宣教師たちの語りの中から探っていく予定です。

第147回講演会のお知らせ

ケニア滞在記

日付: 2018年1月13日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
東 誠(あずま まこと)氏
1941年生れ。1965年大学卒業後、東レ(株)に入社。主に、経理・管理、海外事業(この間ケニア、香港勤務)、企画、炭素繊維事業等に従事。1999年東レ(株)を退職し、7年間中小企業で働く。

概要:
40年前、思ってもみなかったアフリカの地に派遣され、短期間でしたが、公私に亘って様々な経験をしました。仕事、日常生活、病気、旅行、関わった人達のことなど、できる限り思い出してまとめたので、写真をベースにありのままの体験を紹介するつもりです。

第146回講演会のお知らせ

ティロール(チロル)の伝統としての射撃文化-アルプスの「伝統」を通して見る国境紛争

日付: 2017年12月16日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
鈴木珠美氏(東京外国語大学研究員)
千葉県出身。早稲田大学にて西洋史を、東京大学にて地域文化研究を専攻。大学在学中に、ヨーロッパの多言語地域における民族紛争や国境紛争に関心を寄せる。イタリア語圏とドイツ語圏の境界であり、オーストリアとイタリアにまたがるアルプスのティロール(チロル)地域の現代史を研究対象としている。

概要:
イタリアの北東部とオーストリアの西部の国境をなすのは、アルプス山脈中のブレンナー峠である。この峠の南北にまたがる地域は、双方ともティロール(チロル)と呼ばれている。北部、南部ともにハプスブルク君主国の支配下にあったが、第一次世界大戦後、イタリアがアルプス山脈の南麓側のティロールを領有した。後にこの南側の地域は、南ティロールと呼ばれることになる。この地域の住民の大半を占めたのは、北側のティロール同様ドイツ語をはなす人々であった。
国は異なるものの同じ言語を話す人々には、共通する慣習や伝統がある。今回は、この伝統のうち「射撃」を取り上げる。一見、地域の伝統行事に随行し、華やかなパレードを披露する伝統維持団体であるが、特に南ティロールの射撃協会は、地域分裂の歴史を反映し、オーストリアへの復帰といった独自の政治的主張を展開する団体でもある。本報告では、この射撃協会を例に国境によって隔てられた地域がたどった複雑な20世紀の歴史を紐解いていく。

第145回講演会のお知らせ

ロシア革命100周年に寄せて:映画に刻まれた革命の表象を基に

日付: 2017年11月11日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
佐藤千登勢氏(法政大学国際文化学部教員)
福島県生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。早稲田大学大学院文学研究博士課程修了。専門は文学理論・ロシア文学・ロシア映画。ロシア(ソ連)との初めての出会いは、子供の頃に聴いたショスタコーヴィチの「祝典序曲」(1947)。
著訳書に、『シクロフスキイ 規範の破壊者』(南雲堂フェニックス)、『映画に学ぶロシア語:台詞のある風景』(東洋書店)、タチヤナ・コトヴィチ『ロシア・アヴァンギャルド小百科』(共訳、水声社)。『ロシアNIS調査月報』(一般社団法人 ロシアNIS貿易会)に2014年12月号より映画コラムを連載中。

概要:
100年前の10月25日(旧暦)から翌日にかけて、世界初の社会主義革命がロシアで達成されました。
以来、11月7日(新暦)は革命記念日として毎年賑々しくかつ厳かに祝われてきたことは周知の事実です。しかし、ソ連が崩壊して社会主義の意義が損なわれたエリツィンの時代、この日は祝日ではあり続けましたが「和解と合意の日」と名前を変えました。1996年のことです。やがて第二次プーチン政権下では、革命記念日の影を引きずる11月7日が祝日から外され、代わりに、1612年にまで遡って、当時ポーランド軍に占領されていたモスクワがミーニンとポジャルスキー率いる義勇軍によって解放された11月4日を新たな祝日として設け、「民族統一の日」となっておりますね。この経緯ひとつをとってみても、今、ロシア革命100周年をどのように扱えばよいのか、どのように記念すればよいのか、ロシアの人々は戸惑いを感じるのではないでしょうか。国内では、この記念日を歴史的史実として懐古するような討論会、学会が開催されている様子はあまりなく、革命100周年に向けた歴史的出版物も目を引くものがありません。驚いたのは、革命期から1920年代初期にかけて開花したアヴァンギャルド芸術(絵画、映画、ロシア・フォルマリストの論考など)をめぐる展覧会や回顧展は、今年に入って其処彼処で開催され、関連書物が多く出版されていることです。ロシア革命の歴史的意義や功罪を問い直そうという試みや催しは、むしろ欧米や日本においてのほうが盛んである印象です。
さて、このたびは、歴史の専門家ではない私がロシア革命についてどんなお話ができるかと考えましたところ、ソ連時代から今日まで国内で制作されてきた映画には革命期のとりわけ内戦を背景にした作品が少なからずあることを思い出しました。これらの作品における革命の表象を通して、とくに革命に対する評価の逆転について着目し、映像の一部をみなさんと分かち合いたいと思います。