「地中海の海賊――知られざる英雄ウスコク」
越村 勲 氏(東京造形大学教授)
日付: 2015年01月10日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)
講師プロフィール:
越村 勲(こしむら いさお)氏
東京造形大学教授。研究テーマは、クロアティアなど東欧の社会・文化史。
著書・訳書:R・オーキー『東欧近代史』(勁草書房、1987年)、『東南欧農民運動史の研究』(多賀出版、90年)、Ph・E・モズリー『バルカンの大家族ザドルガ』(彩流社、94年)、D・ロクサンディチ『クロアティア=セルビア社会史断章』(彩流社、99年)、S・ノヴァコヴィチ『セロ――中世セルビアの村と家』(刀水書房、2003年)、『映画「アンダーグラウンド」を観ましたか』(彩流社2004年)、新世界地理第10巻『ヨーロッパⅣ――東ヨーロッパ・ロシア』(朝倉書店06年)、『クロアティアのアニメーション』(彩流社、10年)、K・カーザー『ハプスブルク軍政国境の社会史』(学術出版会、13年)。
講演要旨:
舞台は地中海の東北部、いわゆるアドリア海。時代は日本の戦国時代から江戸初期にかけて、クロアティアの場合半ばオスマン帝国に支配され、オーストリアやヴェネツィアに助けを求めたり、逆に利用されたりした時代(この時代の緊張感や暴力については、例えば黒澤映画「七人の侍」を参考にして下さい)。
クロアティアではハンガリーの南からアドリア海にかけて軍政国境という、万里の長城のような国境地帯が作られます。そしてオスマンの支配から逃れた難民とヴェネツィアからきた流民とが、軍政国境の港町セーニに集まって海賊団を作ります。それがウスコク(日本語で多少無理に訳すと「飛入り衆」)です。
今回はウスコクが①海賊といってもどういう海賊だったか、②どうして海賊になったか、③どういう活動をしていたか、そして④どうしてウスコクは永らくクロアティアの英雄でいられたのか、についてお話しします。
先ほど日本の戦国時代と比較しましたが、大航海時代の早い時期に、東地中海と東シナ海の沿岸の人々や境界社会が世界の動きにどう反応したかを比較検討するプロジェクト”Uskok and Wako〜Piracy, Border Society and the Making of Modern World‐Economy” を現在進めており、今回はその一環として、またウスコクについて本邦で始めて詳しくお話しすることになります。
なお、当日の最後に、私が東京造形大学の卒業生とともに作った、6分ほどのアニメーション「ウスコク/キリスト教世界の英雄」を上映します。
[典拠:Catherine Wendy Bracewell, The Uskoks of Senj~ Piracy, Banditry, and Holy War in the Sixteenth-Century Adriatic, Cornell University Press,1992.ほか近年のクロアティアのウスコクに関する研究論文や学会報告など。]