ティロール(チロル)の伝統としての射撃文化-アルプスの「伝統」を通して見る国境紛争
日付: 2017年12月16日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)
講師:
鈴木珠美氏(東京外国語大学研究員)
千葉県出身。早稲田大学にて西洋史を、東京大学にて地域文化研究を専攻。大学在学中に、ヨーロッパの多言語地域における民族紛争や国境紛争に関心を寄せる。イタリア語圏とドイツ語圏の境界であり、オーストリアとイタリアにまたがるアルプスのティロール(チロル)地域の現代史を研究対象としている。
概要:
イタリアの北東部とオーストリアの西部の国境をなすのは、アルプス山脈中のブレンナー峠である。この峠の南北にまたがる地域は、双方ともティロール(チロル)と呼ばれている。北部、南部ともにハプスブルク君主国の支配下にあったが、第一次世界大戦後、イタリアがアルプス山脈の南麓側のティロールを領有した。後にこの南側の地域は、南ティロールと呼ばれることになる。この地域の住民の大半を占めたのは、北側のティロール同様ドイツ語をはなす人々であった。
国は異なるものの同じ言語を話す人々には、共通する慣習や伝統がある。今回は、この伝統のうち「射撃」を取り上げる。一見、地域の伝統行事に随行し、華やかなパレードを披露する伝統維持団体であるが、特に南ティロールの射撃協会は、地域分裂の歴史を反映し、オーストリアへの復帰といった独自の政治的主張を展開する団体でもある。本報告では、この射撃協会を例に国境によって隔てられた地域がたどった複雑な20世紀の歴史を紐解いていく。